Archive for the ‘THE トラブル’ Category
途中で帰ればよかったです
形式的に男女が交互に座っているが、歌に夢中で、会話をする雰囲気ではない。
時が過ぎ、有志だけ残ることになった。
ここからは会費とは別会計になる。
何か起こるような予感がした。
僕は残った。
会場でさきほどから一人で歌いまくっていた、ツギハギだらけの服装をした娘が、TVドラマ『妊娠ですか』のテーマソングを歌いながら、
「じゃあ、男性の方、あとは払ってくださいね」
と音頭を取った。
そのとき突然、カラオケのトーンキーが狂い始めた。
ツギハギ娘は、 一人で発狂、マイクを壁にガンガンたたきつけ始めた。
「何よ、このマイクー 頭おかしいんじゃないの!?」
壁には既にヒビが入っているが女は手を止めない。
とたんに気の弱そうな男性たちが一人立ち、二人立ち、しまいには僕と商店街のオヤジ、そして痙攣しながら酒を飲んでいるハニワのようなサラリーマンだけになった。
やがてカラオケは正常に動き出した。
再びネジが外れたような『妊娠ですか』の歌が、ボックス内に流れ始めた。
ジャングル黒べえが、おもむろに店員を呼んで物凄いスピードで食事を注文した。
「男の人が払ってくれるんだもん、どんどん頼んじゃいましょうよ」
ヤベ~と思ったが遅かった。
アレヨアレヨという間に、僕の前には、大量の料理や酒が運び込まれてきた。
動物的な危険本能が、僕に逃げろと叫んでいた。
だが遅かった。
僕は隣にいたゴリラ老婆に両腕をガッシリ掴まれて身体の自由を失っていたのだ。
「何を恥じらってるのよ。今日は無礼講なんだから、朝まで一緒に歌いましょ~ん」
時間にして一時間半。
僕にとってその時間が地獄のように長く感じられたのはいうまでもない。
ひやかしはロクな目に遭わないことになっているのだ。
そう、この出会い系サイトの男女交際サークルは宗教なのである。
この出会い系サイトの男女交際サークルは信じる者だけが救われる(出会える)!?
本当に途中で帰って、いつものように普通に出会い系サイトで、女性との出会いを探しておけば良かったと後悔しています。
これからはいつも使っている出会い系サイト情報の出会い系サイトだけを使うようにしたいと思います。
ヤッパリダメだったんです
さて、最後に。
出会い系サイトの男女交際サークルの取材を終えた僕は、知り合いの風俗ライターにことの顛末を話した。
氏は安ければどこへでも足を運ぶという無料出会い系サイト渡り鳥。
業界ではつとにその名を知られる人物である。
すると意外な答えが返ってきた。
「君、あの出会い系サイトの男女交際サークルにはもう一度行ってみるべきだぞ」
「え?もう1度・・・・・・」
こまだ僕の会員期限は切れていなかった。
しかし、あの出会い系サイトの男女交際サークルはそんなによいところなのだろうか?
兄者は自信満々に語るのである。
「バカだな。あそこはある芥川賞作家も修業時代にナンパに励んだっていうし、第一あそこの主宰者の息子は会員の女の子と結婚したという話だぜ」
そういえば「出会い系サイトの男女交際サークル」、実は月一回のペースでカラオケパーティも開催しているらしい。
七千円の会費を払えば、パーテイに参加でき、追加で二人指名できるとか。
「どんなところか覗いてみるのもいいんじゃないの? ヒヒヒ……」
「え~ホントですかア……」
半信半疑だったが、なにしろ芥川賞である。
電話で場所と時間を確認して僕はとりあえず、会場へ向かった。
夕方六時。
そこは、とあるさびれたカラオケハウスだった。
僕は少し遅れて行ったが、既に部屋は満杯だった。
本来なら五、六人くらいしか入れない部屋なのに十人以上が詰め込まれているのだ。
男女の比率は半々。男性は八百屋とか町工場の連中ばかりだ。
「夜霧のブルース」、「兄弟舟」、青い山脈∵…‥
と山日も壮烈で、会場はもはや中小企業の忘年会状態と化していた。
一方、女性はといえば、ショッキングピンクのスーツに身を包んだゴリラのような六十歳の老婆、ツギハギだらけの服を着、目が左右にズレたロングヘアの女子学生、ジャングル黒べえソックリな四十代のオバサン……。
一体どこからこんな面白い顔の人間を見つけてきたんだろうか? と思えるぐらい、すさまじい。
誤解のないように言っておくが、途中で二、三名、若くて綺一麗な女性もやって来た。
しかし十分もしないうちに会のあまりのディープな雰囲気に圧倒されたらしい。
いずれも逃げるようにすっ飛んで帰ってゆくのだった。
こんなところは宗教!?
▼優良出会い系サイトとは言え、男女交際サークルは宗教である!?
ーーと、ここでもうひとつの疑間が湧いてきた。男と女の出会い系サイトでの出会いは限りなくある。
飲み屋でも映画館でも、パソコンやサークルでも……。
なのに、人は何故、「出会い系サイトの男女交際サークル」や「出会い系サイトの恋人紹介センター」へ足を運ぶのか?
後日、僕は二人の男女に話を聞く機会を得た。
いずれも三行広告に出ていた池袋の「出会い系サイトのポケベルサークル」(仮名)の常連さん。
ちなみにここのシステムは、ポケベルの番号を教えてもらって自分で連絡をとって出会うコースと、店がセツテイングして直接店の中で対面するというコースの二つがある。
ちなみに、会費は男性一万円。
女性五百円。
男女双方のアルバムが置いてあるのが特徴だ。
よい相手が見つかれば、どちらからでも積極的にアタックができる。
店には運転免許証など身分証明証の写しを提示するのが決まりとなっており、お互いの身分が明確にされているというのもこの会ならではだろう。
「ここに来るのは、やっぱりいい男に当たる確率が高いから。この間紹介してもらったのは、青年実業家なんですけど、そこら辺のモデルよりもよつぽどカッコイイんです。遊び方もスマートなんです」
と言うのは、二十九歳のOL風の女性。
彼女はかなり遊び上手のようだった。
ブルセラショツプヘパンツを売りに行ったこともあるという。
前出の″変態バー″にも出入りした過去があるが、マスターの自ら演じていたSMプレイがあまりに過激だったため仰天して行くのを止めたという。
一方の三十五歳の男性会員の言い分はこうだ。
「僕が付き合った女の子たちのほとんどは、ちゃんとした恋愛が目的でしたね。もちろん中にはウリ目的の子もいる。今どちらかというと後者のほうばかりがマスコミで取り上げられますが、実際は両極端なんですよね。男性も、愛人をつくるという目的ではない人も多いと思う」
さらに彼は、こうも付け加えた。
「ここは、絶対ヤラセはないですよ。普通に生活している中では、みなさんが思っているほど出会いって見つけにくいものではないじゃないですか。セックスだけ求めるならば普通の風俗へ行けばいい。でもセツクスだけではなかなか満たされないんですよね」
女性会員の方も、
「こういう場を利用する女性の目的意識が多様化してきたんです。援助交際目的だけでない、セックスだけが目的でもない。出会ってみてから、どういうふうにお付き合いしていこうか決めることだってある。どうなるか先がわからないギヤンブル性が面白いんです」
と店には並々ならぬ信頼を寄せるのだった。
二人の話を聞き終わって、僕は思った。
出会い系サイトの男女交際サークルは一種の宗教なんじゃないかと。
出会いという御利益を求める人々のための宗教……。
なかでも海のものとも山のものとも知れない三行広告での「出会い」は、それが密室での出来事であるがゆえに、なおさらそう思えてしかたがなかった。
変なサイトに捕まりました
ここで新たな疑間が生まれた。
これらの場所へ女性出会い系サイト会員として登録する女の子たちは果たして本当に素人かということである。
この僕の疑間に明快な答えを出してくれたのが、同じく三行広告に「愛人紹介」(仮名)と出ていた会の元事務員、E子さん(三十歳)だ。
ここは男性出会い系サイト会員は入会金(年会費)十万円、紹介料が一人につき一万円、女性を写真とプロフイール付きのファイルから選べるという登録制のいわゆる″愛人バンク″。
E子さんによれば、
「男性は援助交際と愛人、女性はほとんどが愛人でしたね。男性の方でお見合いの相手はいませんかと言ってきたお客さんが来たんで、援助なしのお見合いコースを作ったんですが……女性のほうからの反応はゼロでしたね」
とのことだった。
会の登録人数は、男性が三百名、女性が三百五十名。
男性はサラリーマンや自営業、女性はOLや主婦がほとんどだという。
会によってはホテトル嬢が出会い系サイト会員として入り込むところもあるそうだが、
「でも、少数ですよ。会のほうでは、会員の方の職歴には関知しませんからね」
と彼女は笑った。
彼女たちが交際に希望する金額の相場は三万。
今年からは景気が回復したせいか、四万に上がっている。
完全にお金で割り切ってるのがほとんどだそうだ。
「既婚者の出会い系サイト会員も意外と多いですよ。女性出会い系サイト会員の家に電話すると赤ちゃんの声が聞こえたりする。当日、子供に熱が出て行けなくなったとか(笑)。そういう人っていうのは若い頃から売春癖が抜けないんじゃないかな。女性会員も二十代後半になると相手を選びますね。一回こっきりじゃないかどうか、今後もお金を引っ張り出せそうかどうか。女性もバカじゃありませんから」